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権利関係①:民法の基本

宅建の試験は、ぜんぶで50問。そのうち14問が、この「権利関係(民法)」から出ます。民法は、人と人とのあいだの約束(契約)のルールブックのようなもの。ぜんぶ完ぺきに覚えるのは大変なので、合格する人は「ここで6〜7割を確実に取る」という作戦で進めます。

このページでは、その土台になる民法の基本8つのテーマを学びます。むずかしい言葉が出てきますが、まずはやさしいたとえでイメージをつかみ、正確なルールや数字は○×の比較表とひっかけ注意でしっかり覚える、という2段がまえで進めましょう。

1. 制限行為能力者 ── 判断力の弱い人を守る制度

行為能力(こういのうりょく)というのは、ひとりでちゃんとした契約を結べる力のことです。たとえば、まだ小さい子どもや、判断する力が弱くなってしまった人が、ひとりで高い物を買わされたら困りますよね。そこで民法は、そういう守ってあげたい4タイプの人を決めて、もし不利な契約をしてしまっても、あとから「やっぱりナシにします」と取り消せるようにしています。この「取り消せる」が、弱い立場の人を守るいちばんの武器なのです。

図1 4タイプの制限行為能力者と保護者の権限。判断力の弱い順に並ぶ

取り消せるのは本人やその保護者などで、契約の相手は取り消せません(守られるのは弱い立場の人だからです)。取り消すと、その契約ははじめからなかったことになり、返すお金はいま手もとに残っている分(現存利益)だけでOKです。

一方、契約した相手のほうは「取り消されるのかな?どうなるんだろう」と不安になります。そこで相手は、1か月以上の期間をきめて「この契約、認めますか?」とたずねることができます。これを催告(さいこく)といいます。返事がなかったときにどうなるかは、だれにたずねたかで変わります。

図2 催告して期間内に返事がない場合の効果。単独で確答できる人への催告は「追認」になる

2. 意思表示 ── 冗談・グル・勘違い・だまし・おどし

契約は、「売ります」「買います」というおたがいの気持ち(意思表示)がピタッと合うことで成立します。でも、もし冗談だった・ふたりでグルだった・勘違いだった・だまされた・おどされたとしたら、その契約はナシにできるのでしょうか? 考えるポイントは2つだけ──①その契約は最初からムダ(無効)か、あとから取り消せるか、②なにも知らずに関わった人(善意の第三者)を守るかです。ここは権利関係でいちばんよく出るところなので、しっかり整理しましょう。

図3 5つの意思表示の効果と第三者保護。強迫だけが第三者にも勝てる最強

第三者による詐欺は、相手方が詐欺の事実を知っていた・知ることができた(悪意・有過失)ときに限り取り消せます。一方第三者による強迫はそのような制限なく常に取り消せます。「動機の錯誤(値上がりすると思って買った等)」は、その動機が表示されていた場合に限り取消しの対象です。なお表意者に重大な過失があると原則取り消せません(相手も同じ錯誤/相手が悪意・重過失なら例外的に取消可)。

3. 代理・無権代理・表見代理

代理とは、本人の代わりに別の人(代理人)が契約してくれるしくみです。たとえば、お父さんの代わりに不動産屋さんが家を売る契約をすると、その効果はお父さん(本人)に直接とどきます。このとき代理人は「○○さんの代理で来ました」と名乗る(顕名)ことが必要です。おもしろいことに、代理人は制限行為能力者でもかまいません(本人が承知で選んだのだから、あとから「代理人が未成年だったから取り消す」とは言えない)。なお、自分ひとりで売主も買主も兼ねる(自己契約)/一人で両方の代理をする(双方代理)のは原則ダメです。

本人 相手方 無権代理 表見代理 代理人
図4 代理の三角関係。代理権がないのが無権代理、本人に落ち度+相手善意無過失で救済されるのが表見代理

無権代理(代理権がないのに代理人を名乗る)は、本人が追認しなければ本人に効果が及びません(無効状態)。本人には追認権・追認拒絶権があり、追認すると契約時にさかのぼって有効になります。相手方には次の4つの権利があります。

図5 無権代理における相手方の権利。催告だけは悪意でも行使できる

表見代理は、本人に落ち度があり相手方が善意無過失のとき、無権代理を有効として本人に効果を帰属させる救済制度。①代理権授与表示(109条)②権限外の行為(110条)③代理権消滅後(112条)の3類型があり、共通要件は本人の帰責性+相手方の善意無過失。なお表見代理が成立しても、相手方は無権代理人の責任追及を選んでもよいです。

4. 時効 ── 取得時効と消滅時効

時効(じこう)は、「長い時間が経つと、権利関係をはっきりさせよう」という制度です。びっくりするかもしれませんが、他人の土地でも長く使い続けると自分の物になったり(取得時効)貸したお金も長く放っておくと返してもらえなくなったり(消滅時効)します。いちばん大事なのは、時効は自動では効かず、「時効を使います」と主張(援用・えんよう)してはじめて効果が出るということです。

取得時効(所有権)の要件は①所有の意思②平穏かつ公然③他人の物を占有。必要な占有期間は占有開始時の状態で決まります。

10 年 善意無過失 過失なく自分の物と信じた 20 年 悪意・有過失 それ以外
図6 取得時効の必要期間。善意無過失なら10年、それ以外は20年。判定は占有開始時
図7 消滅時効の主な期間。所有権は消滅時効にかからない点に注意

時効の利益を受ける者(当事者・保証人・物上保証人・第三取得者など)が援用して初めて効果が発生します。時効の利益は完成前には放棄できません(完成後は放棄可)。手続を中断する制度として、完成猶予(催告は6か月の猶予)と、更新(確定判決・債務の承認で期間がリセット)があります。

5. 物権変動と対抗要件(民法177条)

同じ家や土地について、2人が「これはわたしの物だ!」と言い合いになったら、どちらが勝つのでしょう? 民法のこたえはシンプルで、「先に登記(とうき=名義の届け出)をした人が勝ち」(177条)です。登記は、いわば「わたしの物です」という公式の旗を立てるようなもの。ただし、そもそも争う資格のない人(うその名義人や、勝手に住みついている人など)には、登記がなくても勝てます

図8 登記なしで対抗できる相手(177条の「第三者」にあたらない者)。単なる悪意者は第三者にあたる

場面別の処理は「○○の前は登記不要で勝てることが多い、○○の後は対抗関係(登記の早い者勝ち)」が基本パターンです。

図9 取消し・解除・時効完成の前後で、第三者が登記不要か対抗関係かが切り替わる

6. 抵当権・根抵当権

抵当権(ていとうけん)は、お金を貸すときの「もしものための約束(担保)」です。たとえば銀行が家を買うお金を貸すとき、その家に抵当権をつけておきます。もし借りた人が返せなくなったら、銀行はその家を競売(けいばい=強制的に売ること)にかけ、その売れたお金からほかの人より先にお金を回収できるのです。すごいのは、抵当権をつけても借りた人はその家にそのまま住み続けられること。だから住宅ローンで使われているのです。

付従性 債権が消えれば消える 随伴性 債権が移れば移転 不可分性 全額弁済まで全部に及ぶ 物上代位性 代金・賃料・保険金にも(払渡前に差押え) 抵当権
図10 抵当権がもつ4つの性質(通有性)

法定地上権(388条)は、次の4要件すべてを満たすと成立します。

図11 法定地上権の成立要件。設定時に建物が存在し、土地建物が同一所有者であることが必須

7. 債務不履行・契約解除・危険負担

契約したのに約束を守らないこと債務不履行(さいむふりこう)といいます。約束を守らない相手には、ちゃんとやらせる(履行請求)・契約をやめる(解除)・損をうめてもらう(損害賠償)という3つの手があります。約束を守らないパターンは2つ。できるのに遅れる「履行遅滞」と、もうできなくなった「履行不能」です。

図12 契約解除の2ルート。催告解除は軽微なら不可、無催告解除は不能・拒絶で即解除

解除の効果は原状回復義務(受け取った物を返す。金銭は受領時からの利息を付して返還)。第三者の権利は害せません

8. 売買(手付・契約不適合責任)

手付(てつけ)は、契約のときに買う人がとりあえず先に払うお金のこと。このお金は、原則解約手付(かいやくてつけ)といって、あとで「やっぱりやめたい」というときに使えるお金です。もうひとつの契約不適合責任は、買った物が約束とちがっていた(雨もりがあった等)ときに、売った人が責任をとるルール。むかしは「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と呼ばれていたものが、これに変わりました。

図13 解約手付による解除のタイミング。相手が履行に着手すると解除できなくなる

契約不適合責任(562条〜)では、買主は次の4つの権利を持ちます。売主の帰責事由が必要なのは損害賠償だけという点が頻出です。

図14 契約不適合責任の4つの権利。損害賠償だけは売主の帰責事由が必要

暗記の総まとめ(権利関係①の数字)

制限行為能力者への催告期間。1か月以上が定番の数字
図15 権利関係①で必ず覚える数字の一覧

民法の基本がそろいました。次は同じ権利関係でも得点しやすい借地借家法・区分所有法・不動産登記法と、相続・不法行為へ進みます。範囲が狭く落としにくいので、ここを確実に取りに行きましょう。