法令上の制限
「法令上の制限」は、かんたんに言うと「ここにこういう建物を建ててもいいですよ/だめですよ」というルールの集まりです。もし、だれもが自分の土地に好きなだけ高い建物や工場を建てたら、街はぐちゃぐちゃになってしまいますよね。そうならないように、国や自治体が「どの場所で・何をするには・だれの許可がいるか」を決めているのです。
この分野は数字をきちんと覚えれば、確実に点が取れるところ。例年8問出ます。むずかしい言葉が多いので、まずはやさしくイメージをつかみ、正確な数字は表にまとめて覚えていきましょう。
1. 都市計画法 ── 街づくりの大きな地図
まず、日本の中で「ここは計画的に街をつくるエリアにしよう」と決めた場所を都市計画区域といいます。そしてその中を、さらに2つに分けます。どんどん街にしていくエリア(市街化区域)と、今は街にしないでおくエリア(市街化調整区域)です。この線引きを区域区分と呼びます。
| 区分 | 意味 | 用途地域 |
|---|---|---|
| 市街化区域 | すでに街、または約10年以内に街にする区域 | 必ず定める |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑える(街にしない)区域 | 原則として定めない |
| 非線引き区域 | 区域区分をしていない都市計画区域 | 任意 |
街にするエリアの中では、「ここは静かな住宅地」「ここはにぎやかな商店街」「ここは工場地帯」というように、土地の使い道で区分けします。これを用途地域といい、ぜんぶで13種類(住居系8・商業系2・工業系3)あります。
2. 開発許可 ── 土地を造成するときの許可
山や畑をならして宅地にすること、つまり建物を建てる目的で土地のかたちを変えることを開発行為といいます。かってに大きな造成をされると危ないので、一定の広さ以上は都道府県知事の許可が必要です。この「一定の広さ」の数字が、いちばんよく問われます。
㎡
市街化区域で許可が不要となる上限
これ未満なら許可不要。非線引き等は3000㎡、区域外は1ha(10000㎡)
| 区域 | この面積未満なら許可不要 |
|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡未満 |
| 非線引き都市計画区域 | 3,000㎡未満 |
| 準都市計画区域 | 3,000㎡未満 |
| 都市計画区域・準都市計画区域の外 | 1ha(10,000㎡)未満 |
| 市街化調整区域 | 面積に関わらず許可必要 |
許可がおりて工事が終わったら、知事の検査を受け、最後に工事完了の公告が出ます。この公告の前後で、建てられるものが変わります。
- 1 公共施設管理者と協議 32条
- 2 知事へ申請 許可 or 不許可を文書で
- 3 開発登録簿に登録
- 4 工事完了→検査→公告 翌日に公共施設は市町村へ帰属
3. 接道義務 ── 道路に2m以上つながっていること
火事や地震のとき、消防車が来たり避難したりできるように、建物の敷地は道路にちゃんと接していなければなりません。これを接道義務といいます。ルールはとてもシンプルで、「幅4m以上の道路に、2m以上接していること」。この「2m」は丸暗記しましょう。
m以上
敷地が道路に接していなければならない長さ
道路は幅員4m以上が原則
4. 建ぺい率・容積率 ── どれだけ建てられるか
つぎは計算が出るところ。少しむずかしく感じますが、たとえで考えればだいじょうぶです。
- 建ぺい率=土地を真上から見たとき、地面をどれだけ建物でおおえるかの割合。お弁当箱(土地)に、おかず(建物)をどれだけ広げていいか、のイメージです。
- 容積率=土地に対して、各階の床をぜんぶ足した広さをどれだけ建てられるかの割合。つまり何階建てにできるかの目安です。
| 求めるもの | 計算式 |
|---|---|
| 建築面積の上限 | 敷地面積 × 建ぺい率 |
| 延べ面積の上限 | 敷地面積 × 容積率 |
建ぺい率には、条件しだいで上限が増える「おまけ(緩和)」があります。角の土地だったり、火事に強い建物だったりすると、建ててよい広さが増えるのです。
容積率には、もうひとつ注意点があります。前面道路の幅が12m未満のときは、地図で決められた容積率(指定容積率)と、「道路の幅 × きまった数字(乗数)」で計算した容積率の、小さいほうが上限になるのです。
| 用途地域の系統 | 前面道路幅員にかける乗数 |
|---|---|
| 住居系 | 4/10 |
| 住居系以外(商業・工業系等) | 6/10 |
5. 用途制限 ── どこに何を建てられるか
用途地域ごとに「建ててよい建物・だめな建物」が決まっています。ぜんぶ覚えるのは大変なので、「ぜったいNGの組み合わせ」と「どこでもOKのもの」を中心に押さえましょう。
| 建物 | 建てられない用途地域 |
|---|---|
| 住宅・共同住宅・図書館・老人ホーム | 工業専用地域のみ不可 |
| 神社・寺院・診療所・保育所・公衆浴場・派出所 | なし(全用途地域でOK) |
| 大学・高専・病院 | 低層住居系3地域・工業・工業専用は不可 |
| ホテル・旅館 | 低層・中高層住専・工業・工業専用は不可 |
| 幼稚園・小中高校 | 工業・工業専用は不可 |
6. 高さ制限・防火地域
背の高い建物が近所の日当たりをうばわないように、いろいろな高さのルールがあります。
| 制限 | 適用される地域 |
|---|---|
| 絶対高さ制限(10m or 12m) | 低層住居系3地域(一低・二低・田園住居) |
| 道路斜線制限 | すべての用途地域・区域 |
| 隣地斜線制限 | 低層住居系3地域では適用なし |
| 北側斜線制限 | 低層住居系3地域+中高層住居専用2地域のみ |
| 日影規制 | 商業・工業・工業専用は対象外 |
7. 農地法 ── 田畑を守るルール
わたしたちの食べ物をつくる農地(田畑)は、かってに売ったり宅地に変えたりできないよう、法律で守られています。覚え方は番号でセットにすると楽です。
- 3条=農地を農地のまま売買する
- 4条=自分の農地を宅地などに変える(転用)
- 5条=他人の農地を買って宅地に変える(3条+4条)
| 条文 | 内容 | 許可権者 | 市街化区域の特例 |
|---|---|---|---|
| 3条(権利移動) | 農地のまま売買・賃貸借 | 農業委員会 | 特例なし(常に許可) |
| 4条(転用) | 自分の農地を宅地等に | 都道府県知事等 | 農業委員会へ届出でOK |
| 5条(転用目的の権利移動) | 他人の農地を買って転用 | 都道府県知事等 | 農業委員会へ届出でOK |
8. 盛土規制法・土地区画整理法
あぶない盛土(もりど=土を盛って造成すること)で災害が起きないよう、2023年にできた新しい法律が盛土規制法です。区域内で一定規模の工事をするには知事の許可が必要で、その数字を覚えます。盛土は崩れやすいので、切土(きりど)より小さい数字で規制されるのがポイントです。
最後は土地区画整理法。バラバラの土地を、道路や公園を整えたきれいな区画に整理する事業です。みんなが少しずつ土地を出し合い(減歩・げんぽ)、その分で道路や売却用の土地(保留地)を生み出します。
暗記の総まとめ(法令上の制限の数字)
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 用途地域の種類 | 13種類(住居系8・商業系2・工業系3) |
| 絶対高さ制限のある地域 | 低層住居系3地域(10m or 12m) |
| 接道義務 | 幅員4m以上の道路に2m以上 |
| 開発許可不要(市街化/非線引き等/区域外) | 1,000/3,000/10,000㎡未満 |
| 市街化調整区域の開発許可 | 面積に関わらず必要 |
| 建ぺい率の緩和 | 角地+10%/防火・耐火+10%/両方+20%/80%地域で防火・耐火は100% |
| 容積率の前面道路乗数 | 住居系4/10・その他6/10(12m未満のとき) |
| 農地法の許可権者 | 3条=農業委員会/4条・5条=知事 |
| 盛土規制法の許可基準 | 盛土1m・切土2m・面積500㎡超 |
| 建築確認(特殊建築物) | 床面積200㎡超 |
法令上の制限はこれで完成です。次はいよいよ最後、税・その他・免除科目へ。不動産にかかる税金を「買うとき・持っているとき・売るとき」のライフサイクルで整理し、一物五価やフラット35もまとめて押さえましょう。