仕組みと高利回りの理由
前のページで、REITは「みんなで大きなビルを分け合うしくみ」だと分かりましたね。
ここでは、もう一歩おくに進みます。「だれが、どんな役わりで関わっているの?」、そして「どうしてJ-REITは、ふつうの株よりたくさんお金(分配金)をくれるの?」を見ていきましょう。とくに後半に出てくる導管性(どうかんせい)が、このページのいちばんの見どころです。少しずつ、ゆっくり進みますね。
J-REITの中心は「投資法人(とうしほうじん)」
いま東証(とうしょう=東京証券取引所)に上場しているJ-REITは、すべて「投資法人(とうしほうじん)」というかたちをとっています。投資法人とは、不動産を持って運用するためだけにつくられた、会社によく似た特別な法人です。中身がからっぽの「器(うつわ)」のようなものなので、よくビークル(vehicle=入れ物)と呼ばれます。
この投資法人が、投資家に向けて投資口(とうしぐち=J-REITの株式)を発行してお金を集めます。さらに銀行からの借入なども組み合わせて、まとまった資金で不動産を買います。そして物件から入ってくる家賃などの利益を、投資口を買ってくれた投資主(とうししゅ=株主にあたる人)に分配金としてくばるのです。
登場人物(とうじょうじんぶつ)を知ろう
J-REITには、投資法人を取り囲むように、いくつもの専門家が関わっています。名前はむずかしいですが、それぞれが「担当のお仕事」を持っていると思えば大丈夫です。
| 登場人物 | 役割(やさしい説明) |
|---|---|
| 投資主(投資家) | お金を出して投資口を買う人。株主にあたり、分配金を受け取る |
| 投資法人 | 不動産を保有・運用する「器」。投資口を発行し、分配金を支払う。実務は外部にまかせる |
| 資産運用会社 | J-REITの“ファンドマネジャー”。どの不動産を買う・売る・貸すかを決める最も重要な役割 |
| 資産保管会社 | 不動産の権利証などを預かり、分けて管理する(信託銀行など) |
| 一般事務受託者 | 投資口の名義書換や発行などの事務を担う(信託銀行・証券会社など) |
| PM会社 | 建物の保守やテナントとの賃料請求・契約更新交渉などを行う(不動産運営管理会社) |
| スポンサー | 物件供給やブランド・信用力を提供する後ろ盾(不動産会社・商社・金融機関など) |
| 東証(取引所) | 投資口を株式と同じように売買できる市場を提供する |
お金とモノは、どう流れる?
登場人物が分かったところで、投資法人を中心に、お金とモノがどう動くのかを関係図で見てみましょう。矢印を目で追うだけで、しくみのイメージがつかめます。
お金とモノの流れを順番にたどると、こうなります。
- 1 ① 投資口を購入
投資家が投資法人にお金を出す
- 2 ② 不動産を取得
集めた資金+借入で物件を買う
- 3 ③ 賃料を回収
運用会社が物件を運用し家賃を集める
- 4 ④ 利益を分配
経費・利息を引いた利益を投資主にくばる
- 5 ⑤ いつでも売買
投資口は東証で換金できる
本題:なぜ分配金(利回り)が高いの?
J-REITのいちばんの魅力は、ふつうの株よりも多めの分配金(利回り)がもらえることです。どうしてそんなことができるのでしょう。
その秘密が、「導管性(どうかんせい)」という税金のしくみです。「導管(どうかん)」とは、水を通すパイプのこと。お金がパイプをスーッと通りぬけて、そのまま投資家に届くイメージから、この名前がつきました。英語でもペイスルー/パススルー(pass-through=通りぬける)と呼びます。むずかしい言葉ですが、「お金がもれずに通りぬける」とだけ覚えればOKです。
J-REITは、ここがちがいます。導管性要件(どうかんせいようけん)という決まりを満たすと、投資主に支払う分配金を「損金(そんきん=経費)」として扱えるのです。利益のほとんどを分配してしまえば、会社(投資法人)に残る課税対象の利益がほぼゼロになり、投資法人の段階の法人税が実質的にかからなくなります。
法人税というロス(むだ)が消えるので、不動産が生んだ利益がほぼそのまま投資家に届きます。だからJ-REITは、相対的に高い利回りになるのです。下の2つの図で、ふつうの会社とJ-REITの「手元に残る配当の差」を見くらべてみましょう。
同じ100億円の収入でも、ふつうの会社は配当に回るのが30億円なのに対し、J-REITは60億円がそっくり分配金になります。法人税と内部留保のぶん、J-REITのほうが多くを投資家にくばれるのです。これが「高利回り」のからくりです。
導管性の主な要件(中級者向け)
もう少しくわしく知りたい人のために、法人税が実質かからなくなるための主な導管性要件を挙げておきます(代表的なもの)。
- 配当可能利益の90%超を投資主に分配すること(最重要。実務上はほぼ100%を分配)
- 資産運用業務を資産運用会社に委託していること
- 決算期末において同族会社に該当しないこと(筆頭投資主の保有比率が50%以下など。少数の支配者に集中していない)
- 他の法人の発行済株式・出資の50%以上を保有しないこと
- 総資産の一定割合(特定資産)を保有していること など
%超
導管性に必要な分配の割合
配当可能利益のうち。実務上はほぼ100%を分配
%以下
筆頭投資主の保有比率の目安
同族会社に当たらないための条件の一例
しくみと高利回りの理由が分かりましたね。次のページでは、J-REITの「種類」(オフィス・住宅・物流など)と、銘柄を選ぶときに見る「指標(ものさし)」を学びます。